「ソウル(Soul)」は、1950年代から1960年代にかけて、アメリカのアフリカ系アメリカ人のコミュニティから生まれた音楽ジャンルです。
教会の音楽である「ゴスペル」と、世俗的な「R&B」や「ブルース」が融合して誕生しました。
その名の通り、歌い手の「魂(ソウル)」をさらけ出すような情熱的な表現が最大の魅力です。
ソウルの成り立ち
1950年代、レイ・チャールズやサム・クックといったアーティストが、神を讃えるためのゴスペルの歌唱法やコード進行を、恋愛や日常の苦悩を歌うポップミュージックに持ち込んだことが始まりとされています。
1960年代には、黒人の権利を求める「公民権運動」の高まりとともに、アフリカ系アメリカ人のアイデンティティや誇りを象徴する音楽として、世界的な人気を獲得しました。
音楽的な3つの特徴
ソウルミュージックを象徴する要素は、主に以下の3点です。
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ゴスペル由来の歌唱法: 喉を絞り出すようなシャウトや、一つの言葉を複雑に揺らして歌う「メリスマ」という技法が多用されます。感情がダイレクトに伝わる力強いボーカルが主役です。
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コール&レスポンス: リードボーカルとバックコーラス、あるいは楽器が、問いかけと応答を繰り返す形式です。教会音楽の伝統を引き継いでいます。
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豊かなアンサンブル: ピアノ、ギター、ベース、ドラムに加え、華やかな「ホーンセクション(サックスやトランペット)」や、時に豪華なストリングス(弦楽器)が加わり、厚みのあるサウンドを作ります。
主なスタイルとレーベル
ソウルは、拠点となる都市やレーベルによって異なるスタイルが発展しました。
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モータウン(デトロイト): スティーヴィー・ワンダーなどが所属。洗練された都会的でポップな「モータウン・サウンド」を確立しました。
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サザン・ソウル(南部): スタックス・レコードなどが中心。より泥臭く、荒削りでパワフルなエネルギーが特徴です。
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フィリー・ソウル(フィラデルフィア): 甘く、豪華なオーケストラを取り入れた優雅なサウンド。後のディスコ・ミュージックに繋がります。
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ネオ・ソウル(1990年代〜): ヒップホップやジャズの要素を取り入れた、現代的でオーガニックな新しいソウルの形です。
ソウルは、その後のファンクやヒップホップ、現代のポップスに至るまで、あらゆる音楽に「歌うことの情熱」を伝え続けているジャンルです。