「ドゥーワップ(Doo-wop)」は、1950年代から1960年代初頭にかけてアメリカで大流行した、コーラス(合唱)を中心とした音楽ジャンルです。
R&Bのサブジャンルの一つであり、楽器の演奏よりも「声」の重なりに重点を置いた、非常に親しみやすく温かいサウンドが特徴です。
ドゥーワップの成り立ち
ドゥーワップは、ニューヨークやフィラデルフィアといった大都市のストリートコーナー(街角)で、アフリカ系アメリカ人の若者たちが集まって歌い始めたことが起源とされています。
高価な楽器を買う余裕がなかった若者たちが、自分たちの声を楽器に見立てて、教会のゴスペルやジャズ、ブルースをベースにハーモニーを作り上げました。エコーの効く地下鉄の駅の構内や廊下などで練習していたため、独特の響きが生まれたと言われています。
音楽的な3つの特徴
ドゥーワップを象徴する要素は以下の通りです。
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ナンセンス・シラブル: ジャンル名の由来でもある「ドゥーワップ」「シュブーン」「ラン・ラン・ドゥ」といった意味のない言葉(擬音)を、バックコーラスがリズム楽器のように繰り返します。
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リードとハーモニーの構成: 中心となるメインボーカル(リード)を、3〜4人のバックコーラスが支える形式が一般的です。特に、深く響く「低音(ベースボーカル)」と、突き抜けるような「高音(ファルセット)」の対比が魅力です。
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シンプルな循環コード: 「ドゥーワップ・プログレッション」と呼ばれる、特定の心地よいコード進行(C – Am – F – G7など)が繰り返されることが多く、誰にでも口ずさめる親しみやすさがあります。
ドゥーワップは、後のロックンロールやモータウン、そして現代のボーカルグループに至るまで、ポピュラー音楽における「ボーカル・グループ」という形態の基礎を築きました。